自然から色を出す~草木染め~|2024長期インターン(のいびー)

 この一年を通して、泰阜村の自然から様々な草木染めにチャレンジしてきました。ビーツとマリーゴールドの染め物に始まり、実は目の前に見えている草木や野菜くずが豊かな色を持っていることに気づくと、その発見が楽しくて次々とこどもたちと一緒になって染めていました。

(今までの草木染めを記録している染め物ノート)

1.泰阜村から色を出す

 学校からいただいたマリーゴールドできれいな黄色に染まってから、草木染めがみんなの中で日常になりつつありました。大変だと思っていた染め物の工程が身につくと、チャレンジするハードルが下がったのかもしれません。

 そんな中、だいだらぼっちの隣りにある大峰山にみんなで登る機会がありました。足元を見ながら歩いていると、同じ形をした葉っぱがたくさんあることに気づきました。2年目のこどもたちによると、ソヨゴという葉であり、緑色の葉からきれいなピンク色がでるとのことでした。なにか染められるものはないかと袋を持ってきていたので、袋いっぱいに詰めて、期待もいっぱいで下山します。今までの草木染めの経験で、花や実の色の色素が染液の色に近いことを感じていたので、小さくてきれいなピンク色の花が咲いていたハギもとって帰りました。到着しすぐに刻んで煮出すと、淡くて鮮やかなピンクとオレンジの色が。ハギは本にも載っていない初めてのチャレンジだったので、「やってみないとわからないもんだね」と自分たちで色を発見する面白さに気づけた瞬間だったように思います。

 秋になると、だいだらぼっち前の農家さんの田んぼに黄色いセイタカアワダチソウがたくさん咲きました。外来種で花粉の原因にもなっていると聞き、良いイメージを持つ人は少ないのかもしれませんが、こどもたちにとっては「染めてみたい!」と思わせる美しい色、豊かな材料に見えるようです。早速農家さんのところへお話しに行って、「ぜひ自由に使ってね。雑草なので採ってもらえるだけで助かるよ」と許可をもらえました。出てきた色は、ゆで卵のようなきれいな黄色。邪魔者だったものが、見方を変えるだけで最高の材料になることを知りました。

 一日丸空きDAYという個人のやりたいことを叶える日には、こどもたちとだいだらぼっちに生えている草木で11種類の染め物をしました。今回は何かものを作るための染め物ではなく、どんな色が隠れているのかを発見することを目的に少量でどんどんと染めていきます。葉によっては全く色が出ないこと、染まったように見えても色が流れてしまうこともありました。でも、その中には思いもつかない色が出たり、布によって色の出方が変わることも発見できました。

 身の回りにある緑の自然の中にこんなにも多様な色が隠れていることに驚き、次第に泰阜村の自然への見方が大きく変わっていったような気がしました。

2.暮らしから色を出す

 そんな染め物暮らしをしていると、ご飯隊のこどもたちが、ご飯作りで出た野菜のはじっこや、出てきた汁のおもしろい色を見つけては、「染物する?」と取って置いてくれることが増えてきました。玉ねぎの皮やごぼうのささがき汁など、捨てずにおいていてくれます。他にも、栗を取ってきて渋皮煮を作っていた子が、アク抜きをしたあとの赤い汁を残しておいてくれたことがありました。染めてみると今までにない真っ赤な色で布が染まりました。栗の実からこんな色が出ることに衝撃を受けました。

 草木染めは赤や黄色系統が多いため、青色や緑色などの寒色系の色をこどもたちと探していた時もありました。そこで目に入ったのが、ご飯作りで出てきたナスの皮。少量ではありましたが、キレイな紫色に惹かれ、すぐに染め物に取り掛かります。結果薄い紫色は出たものの、あまりはっきりとした色は出ず断念。それでも、こどもたちは全くがっかりすることなく、色が出ないことを楽しんでいました。

 それでは、ナスの茎はどうかと、畑のナスの収穫を終えた頃に、茎と葉を使って染めてみました。すると驚いたことに濃い茶色に染まりました。見た目と全く違う色が出るのが草木染めの面白いところです。収穫を終えた時期だったので色素が薄くなり、ほとんどなくなっていることも原因にあるのかもとこどもたちと話しました。

 そんな中、朝食にお子様ランチでバタフライピーという青いお茶を使って青色のお米を炊いたことがありました。待ち望んでいた寒色系の色を見て、すぐにこのお茶を使って染めてみることにしました。空色のような優しい青色が出たときには、自然の中にはまだまだたくさんの色が隠れていることを改めて感じました。

 自然から材料をいただいて染めるのも草木染めですが、暮らしの中で無駄になってしまうような材料を使って染めるのも草木染めの醍醐味だと感じました。

3.草木染めの魅力

 最初の頃は、工程も難しく、時間も手間もわざわざかかるような草木染めに少し苦手意識もあったのですが、次第に染め物が日常になっていく中でたくさんの魅力を感じるようになりました。

1つ目は、泰阜村に眠っている豊かな材を知ることができること。
泰阜村に生えている草木を使う中で、身の回りの見知った自然の中に多様な色が隠れていることに気づかされました。どこにでもある色ではなく、「ここならでは」「今だけ」の色が出せるだけで、なんだか少し特別感があります。それと同時に、限られた自然の貴重さも材料を採りながら感じました。

2つ目は、じっくり染料と向き合えること。
草木染めをしていると、じんわりと色が出てくる時間やその感覚がだんだんと癖になってきます。その染料ならではのやさしい香りが部屋全体を包んで、のんびりゆっくりと染まっていく中で、染料の特徴や違いを感じました。時間をかけるからこそ、丁寧な色合いができます。

3つ目は、やってみないとわからないこと。
草木染めは種によって部位によって媒染によって四季によって布によって、色は全て異なります。そのため、本を見ても、誰かに聞いてみても、やってみないとわからないというのが結論。だから失敗もありません。色が出ないこと、思っていた色と違うことも一つの大事な結果なのです。この記録が次の草木染めの鍵になっていきます。そして、毎度予想とは異なる色の変化が染まったあとのお楽しみになります。

4つ目は、自然を使うんじゃなくて生かすということ。
最初は自分たちが自然を使って色を作り出していると思っていましたが、実はその色はもともとあるもの。実験を繰り返しながら、自分たちが欲しい色を見つけ出し、作るものに合わせてその色の良さを生かしているのではないかと回数を重ねるごとに実感しました。自然は自分たちの手でどうこうできるものではなく、それを生かしていくのが暮らしなのかもしれません。

 絵の具や色えんぴつ、色の着いた布。
色は私たちの暮らしの中であたりまえに「買うもの」でした。草木染めに出会って、色は「生み出せる」ということ、自然と二人三脚で好みの色が「作れる」ということに気づくと、色の価値が大きく変化したような気がします。また、生かすことで、泰阜村の自然の本当の豊かさを実感したようにも思います。色を出すって早々簡単な事じゃない、だからこそ色の発見は暮らしを豊かにした大発明なのかも、と感じました

自然を楽しみ、共に暮らしていると、私たちの物事の見方を大きく変えてくれるような気がしました。


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