だいだらぼっちでは、一年間のこどもたちの暮らしを支える薪などの作業を、OBOGや保護者の方々を募って行うゴールデンウィーク合宿があります。合宿はこどもたち自身が主催し、それぞれが係を決めて準備をします。例えば全体を把握する「総まとめ」、作業の説明や進行を行う「作業係」、みんなが楽しめるような工夫をする「レク係」などのうち、私が入った係は、合宿中の2泊3日の食事を担当する「食事係」でした。

普段からだいだらぼっちでは、毎食自分たちで冷蔵庫を確認して段取りを取り、ハンバーグやオムライス、お味噌汁に三色丼など様々な食事を作っています。時には山菜を採ってきたり、畑の野菜を使ったりすることもあり、今回もどんな料理ができるのか、私自身もやる気満々でした。

食事係として集まった5人は、「料理を作ってみたい」という思いからほとんどが第一希望で係になり、さあこれからという段取りの日。はじめはメニューや各料理の担当を決めました。
しかし、最終的に話し合いの輪に残っていたのは5人中たった1人。誰がどの料理を担当するのか、誰とペアになるのかで揉めに揉め、ふざけたり、それにいらついたり。一人、また一人といつの間にか話し合いの輪からいなくなり、料理の担当ぎめも途中で中断。「もうこのメンバーで作りたくない!」「合宿の食事なんていらない!」と訴えてくる人も居ました。私はおろおろとするしかなく、もしかしたらこのゴールデンウィーク合宿はご飯抜きどころか、開催できるのだろうかという心配ばかりでした。
それでも自分たちでやると決めたからにはやるしかない。少しずつ、それぞれができる範囲で準備を進めました。


そんな散り散りの状態で、ゴールデンウィーク合宿も目前に迫ってきている中、食事係に少し変化のあった出来事がありました。それは、食事係でタケノコ掘りに行ったことです。「作業の疲れを美味しいご飯で癒やしたい!」「旬のものを食べてほしい!」といった食事係の願いから、合宿最終日にタケノコご飯を出すこと、そして自分たちで掘ることを決めました。村の方に相談すると、山のタケノコを譲ってくださることになり、一緒に行って掘り方を教えてくださいました。「タケノコは先が曲がっている方に根があるから、そこをほるといいんだよ」というアドバイスに、みんな興味津々。初めて言い争いもなく黙々と掘り続ける姿を見ました。それから山の中を探しながら、いろんな植物について教えてもらったり、山椒やタラの芽を見つけては匂いをかいだり。食事係という責任から少し離れて、チームとして楽しさを共有する時間だったように感じました。

また、食事係では合宿の前に試作も行いました。参加者が大人数のため、揚げている時間がないので「揚げない油淋鶏(ユーリンチー)」にチャレンジすること、ほとんどが1年目だったので事前に想像できるようにしておくことが目的でした。最初はごはん作りや食事係で集まることが面倒な人もいましたが、さすがは料理好きの集まりで、それぞれの担当をしっかりとこなしていました。オーブンから出てきた油淋鶏の匂いに目を輝かせて、満面の笑みでみんなで食べた味見の一口は忘れられません。

そしてとうとうやってきたゴールデンウィーク合宿。
「さあ頑張るぞ!」と気合を入れたのもつかの間、前日に100人分のお皿洗いで揉め、疲れや互いへのイライラも溜まった状態で始まりました。それでも合宿では食事は必須です。100人以上の食事なので、一食分でも玉ねぎは一箱、ご飯は80合。時間も気にしながら、切り出しと調理を済ませていかなければなりません。また、合宿中、食事係は食事を作っているだけではありません。薪作業や防腐剤を塗るなどの作業もこなしながら食事を作ります。初日から、果たして乗り切れるのかという不安いっぱいで迎えた気がしました。


しかし、その不安を払拭するかのように切り出しに取り掛かかり、揉め事があってもお勝手で調理し続ける5人の姿がありました。一箱の野菜を黙々と切り出したり、自分の何倍もあるような鍋の中のカレーを見つめて嬉しそうに笑顔を浮かべたり、100人分のご飯を盛り付けながら指示を出したり。米やお茶、配膳といったそれぞれの担当も考えながら動き、以前は注意されれば喧嘩に発展し合っていた仲が、文句は言いつつも鍋を洗ったり、手伝い合ったりして協力することもありました。また、食事係の朝はとても早い。朝食が7時のため、昼食の切り出しもしながら、みんなよりも1時間早く起床しなければなりません。それでも朝は互いに起こし合って、全員で5時に起き、私がついた頃には食材を運んでいる姿にとても驚かされました。片付けができないときや、遊んでしまったこと、その注意で言い争いになることもありましたが、きちんと時間に間に合わせ、「おいしい!」という言葉もたくさんの人からもらうことができました。


ゴールデンウィーク合宿は100人を超える大イベント。初日の昼ご飯から始まり、二泊三日の計7食を、たった5人のこどもたちが仕切って作り上げます。今まで作ったことのない考えられない量をやりきったということ、眠くて作業で疲れていてもお腹に力を入れて起きたということ、準備から片づけまで終えられたということが、本当に単純にすごいと感じました。

初めは、私はまとまらない食事係を見て、話し合う場を設けたほうが良いのか、なにか声掛けをすべきなのかと考えたり、「協力しようよ」と伝えたりもしていました。しかし、合宿までに係のこどもたちと過ごす中で、団結しようとして仲間になるのではなく、思いや体験をともにすることがその一歩になるのではないかと感じました。例えば、タケノコが掘れたときの喜びを共有したり、味見をして「おいしい!」と一緒に感じたりすること。話し合いの難しさを感じたり、100人分の配膳に手間取ってしまうこと。みんなで「やりきった!」と顔を見合わせること。私自身もそうやって体験しながら気持ちをともにすることで、今までよりもこどもたちとの距離がぐっと近づいた気がしました。言われて仲間になるのではなく、言葉をかわしたり、気持ちを伝え合いながら、助け合えるようになる。共に過ごしながら、互いを知るということの大切さを感じました。

私にとってもこの3日間はとても大きなチャレンジの一つでした。このだいだらぼっちにきて一ヶ月が経ち、こどもたちとも毎日をとても楽しく過ごしてきましたが、一緒に責任を持って何かに取り組むということ、うまくいかないことに共に頭を悩ませること、こどもたちと真に向き合って挑戦することは初めてだったように感じます。ぶつかることもあるし、やりきれない思いになることもありました。それでも一緒に過ごした毎日の積み重ねがあったからこそ、互いにぶつかっても大丈夫という安心感があったように思えます。

合宿が終わった後の係の振り返りでは、やっぱりそれぞれが自由だったけど、話し合いの場にちゃんと全員が笑顔で揃っていました。毎日のごはん作りでも、今まで片付けをしなかったこどもたちが皿洗いをするようになったり、最後までお勝手で料理するなどちょっとした変化もありました。目に見える「できるようになったこと」の裏側には、自信や達成感、仲間意識、反対に「こうすればよかったかも」という考え方の変化もあるのかもしれません。一年間、このだいだらぼっちで、体験や気持ちをともにしながら、私自身もみんなとさらに仲間になっていきたいと感じました。


2024年度一年間長期インターン生。長崎県育ち長野県出身。信州大学4年生(休学中)。教育学部でよりよい学び場を模索する中、暮らしや手間の中にある「考える」おもしろさと地域を根っこにした教育に関心を持ち、グリーンウッドのインターン生として参加。