故郷の福井が大雪でたいへんなことに ~今こそ地域のソコヂカラを発揮させよう~

少し前の話になりますが、小学生時代の幼なじみとSNSでつながりました。
「え? もしかして近所に住んでた〇〇?」
「そうそう、近所の〇〇!」
なんとも笑える会話ではないですか。
もう47歳のいい大人が、ですよ。

私の故郷は北陸福井。
県庁所在地のこの街は、こどもの頃は毎年1メートルは軽く積もる豪雪の街でした。
小学5年の「56豪雪(昭和56年)」は忘れもしません。
平野部に2メートルに迫る雪(197㎝)が積もり、大災害となったのです。
学校が3週間ほど休校になりましたが、楽しかったのは最初の1日だけ。
「雪なんて見たくもない」
終わりが見えない雪かきの毎日に、こどもゴコロにそう想ったものです。
そんな自分が、大学時代は札幌、そしてその後は信州を選ぶのですから「頭がオカシイんじゃないか」と福井の友人からは言われます。

そういえば、立教大学(非常勤)の最後の授業でわざわざあいさつに来た学生がいました。
ぼそぼそと「福井市出身です」という彼はどこかシャイな感じがして、「ああ、俺もこんな感じだった、うんうん」となんだか昔の自分を見つめているような不思議な感覚に襲われたものです。
そうそう、鉛色の冬の空の下で「黙って春を待つ」とこんなふうになるって。
そんな自分が、これまた教壇に立って、でかい声で話をしているのだから驚きです。
彼の住所を聞いたら、線路を挟んで隣の地区。
隣の小学校でした。

そんな福井の街が、この冬、たいへんなことになりました。
56豪雪以来、37年ぶりに積雪が130㎝を超したということです。
なるほど、私が小5の時からはもう、あんなに積もっていないんだな。
豪雪を知らない世代が多いんだから大混乱になるのも無理はないのかもしれません。
ちょうど北陸に大雪警報が出る時、福井県と石川県でノウハウ提供や講演等の仕事が4日ほど続く予定でした。
当然ですがすべて中止。

福井市の実家にいるおふくろが心配だったのですが、まず福井に入れないのと、入れたとしても大混乱の街を車で移動するのはリスクが高すぎると判断しました。
積雪の深さを伝えるニュース速報にオドロキを感じながら「やっぱり行けばよかったか」とヤキモキしたものです。
毎日毎日電話でおふくろとやりとりを続けましたが、降り始めから4日目、恐怖を感じる降り方が、やっとひと段落したようでした。
車の掘り出しは後回しにして「近所の人たちに家から道路までの道を雪かきしてもらった」と、声に疲れが滲みでているけど張りもあってちょっと安心。
まあ、私にとってはおふくろだけれど、ご近所さんにとっては86歳の独居老人。
福井市のご近所さんのソコヂカラ=地域の支え合いの力に感謝です。
そして、私もまたそんな地域のソコヂカラに18年間育てられて今があるのだ、と、心の底から感謝するのです。

雪の量は全く違うけれど、同じことは泰阜村でも。
たまに降る雪。
量はたいしたことないのですが、気温が強烈に低くすぐ凍ってしまいます。
それに気づかず玄関を出て転倒する老人が多いのです。
そんなことがわかってるから、私の息子・娘たちや、暮らしの学校「だいだらぼっち」のこどもたちは、雪が降った翌朝には隣近所の独居老人の家の前を雪かきにいきます。
後からもらえるお菓子が目当てだとしても(笑)美しい光景ですね。
こうやって世代を超えて支え合いながら、地域は持続していくのです。

大雪から10日。
福井で別件の仕事があり、ついでに福井市の実家に立ち寄りました。
おふくろは元気だったけれど、やっぱりお疲れ気味。
半日、手がつけられていない場所をひたすら雪かきしました。
ご近所さんにお礼を伝えながら。
今回キャンセルとなったノウハウ提供や講演等の仕事。
年度明けに再調整をしなければならないなあ。
それでも災害多き北陸の取り組みに、われわれの考えや実践が少しでも役に立つのであればうれしく思います。
また北陸に帰ろう。

仕事で福井に帰るとあまり時間がないのと、夜は高齢になったおふくろと一緒に過ごすので、なかなか友人と飲みに行けません。
でも、今度帰ってくるときは飲みに行こうかな。
「え? もしかして隣の(家の)△△?」
「そうそう、隣の△△」
酒場でこんな会話があるかもしれません。
そんなわけないか(笑)。

代表 辻だいち