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代表だいちのGREENWOODコラム


2021年4月1日
フロンティア精神の体現者たち 〜逆境を生き抜く力を育てるために子どもの力を信じることを貫き通す〜



昨年の秋、母校の大学から依頼があった。卒業生のインタビューに出てほしい、ということだ。

「北大人群像〜フロンティア精神の体現者たち〜」という企画サイト。卒業生を紹介するインタビュー&動画サイトだ。サイトの動画を見て、その質の高さに驚く。私の住む村や職場がどのような映像になるのかという興味もあった。しかし、同じページに宇宙飛行士の毛利衛さんなんかもいて、正直なところ私なんかでいいのかなと想ったのも事実。よくよく見れば、各学部から一人ずつ代表者のように登場している。

現在の学科長のメールには「辻君がユニークな卒業生1位」と記してあった(笑) その後、広報担当者からの話をかけあわせてみると…。教育学部が輩出するイメージとはかけ離れた、奇想天外な生き方をしている卒業生、というのが、私の理解だ(笑) それでも、素敵な生き方をしている学部卒業生はいくらでもいるなかで、ほんとに俺なんかでいいのかな、と戸惑いもした。しかし、一生に一度のお誘いだ。よしやってみようと、承諾の返信を送った。


それから4か月。公開された公式サイトのページを見た。俺、老けたなあ(笑) それが最初に想ったことだ。映像は正直だということだろう。同時に、なんだかすごく感動した。自分に、ではない。素敵な音と映像に、だ。まずい顔を話の内容を、完全にカバーしてくれている。そして、私を信州へと送り出してくれた、北の大地のソコヂカラに。

インタビューテキストと、2種類の動画(ショートバージョンとロングバージョン)の3つで「1セット」と感じた。ショート動画で収録できないことを、ロング動画に収録。それでも収録できないことは、テキストに掲載されている。基本的には北大の学生や、北大を目指す高校生に向けた企画だ。北大のPRの意味合いが強いので、「北大愛」をかなり語っていることはご容赦を。

しかし、私は北大PRだけのつもりで依頼を受けていない。とりわけ動画の後半部分で強めに話した「関係性の学力」は、全国のこどもや若者への炎のメッセージであることは、お気づきになったと想う。「暮らしの学校だいだらぼっち」でも、「信州こども山賊キャンプ」でも、そして私が受け持つ数々の大学の授業でも(対面だろうがオンラインだろうが)、この関係性の学力を培ってもらうために、渾身の力を振り絞ってきた。今回の企画を通して、この想いが世に出ることは、本望だ。

誰も知らない土地で挑戦したいと
雄大な自然に抱かれた北海道へ

・・・福井県の自然豊かな田舎で生まれ、子どもの頃から山登りや川遊びをして育ったので、北海道の雄大な自然への憧れがありました。また、人生の大きな選択肢において、誰も知らない土地で挑戦してみたいというアウトロー的な気持ちもあったので、同級生たちが東京や大阪、名古屋などへ進学を希望する中、私は北海道大学を目指しました。もともと地元が豪雪地帯だったので、周囲からは「なぜわざわざ北へ行くの!?」と驚かれましたね(笑)

受験当時は今のように豊富な情報がなく、思い描いていた北大は、大平原にぽつんとあるような北海道のイメージそのものでしたが、初めて訪れた時は「札幌がこんなに大都会なんて!」とびっくりしました・・・


こんな感じでインタビューテキストは始まる。32年前のまさにこの時期、私は北へ向かった。そして28年前のこの時期、北をあとにして信州に。ぜひご笑覧いただきたい。


●北海道大学特設サイト「北大人群像〜フロンティア精神の体現者たち〜」
https://www.hokudai.ac.jp/interview/

●北大人群像第10回 〜教育学部卒 辻英之 インタビュー(テキスト)〜
https://www.hokudai.ac.jp/interview/10_tsuji.html

●YouTube北大公式チャンネル「北大人群像」ショートバージョン
https://youtu.be/SHM96o4EEaI

●YouTube公式チャンネル「北大人群像」ロングバージョン
https://www.youtube-nocookie.com/embed/nOX4nGsoSkA
 代表 辻だいち




2021年3月15日
被災したこどもと一生向き合う 〜10年目の3月11日を福島で迎えて〜



福島にいる。10年目のタイミングに、どれだけの意味があるのか。しかもこのコロナ禍のときに。外部の人が勝手にそう想っていることじゃないのか。結局は、福島の人に負担をかけることになるんじゃないか。そんな想いも強かった。それでも、今、福島に来ることができたというその意味を、しっかりと次の世代に伝えていかなければ。だから、私の教え子たち(立教大のゼミ生)を連れてきた。当時まだ小学生の学生たち。この後の世代は、当事者意識、当時代意識がさらに薄れていってしまう。そんな危機感もあった。コロナ禍を言い訳にしている場合でもない。依然として放射線量が高い地域もあり、学生を同行させることに逡巡もした。が、10年を迎える今がそのタイミングと、学生とやりとりを重ねて実現した。

2月の地震で被害を受けた東北新幹線。新白河駅を過ぎると、極端な徐行運転になり、福島までの所要時間はざっと1時間は遅くなっただろうか。影響を受けているとはいえ、全線開通は東北のひとびとの希望でもある。福島駅に降り立つ。10年前に降り立ったときは、深呼吸することに気を遣う自分がいた。今はマスクで息を潜めている自分がいる。あの頃と何が違うのか、どんな変化があるのか。いつの世も変わらずに確かに時は重ねられていく。その時の積み重ねに沁み込む暮らしの息遣いや想いは、たまに来る自分には感じ取れない。あの日以来、東北に足を運ぶこと50回を数える。それでも、この地に暮らしていない身が、もどかしい。


福島に着いて、真っ先に会ったのは、レイだ。東日本大震災のとき2年間、「暮らしの学校:だいだらぼっち」で受け入れた子だ。放射能から逃れて信州泰阜村にやってきたのは小6の時。今はもう21歳の大学生! 初めて会った日のことを鮮明に覚えている。あの年の5月。田植をしている時に、華奢な身体のレイが泰阜村にやって来た。その細さに、本当に1年間、やっていけるのか心配だった。その後、2年間、泰阜村民となる。泰阜村の支援を受け、村民の皆さんから愛されたレイ。今思えば、身体は華奢だったけれど、芯が強かったな、レイは。

高校生になった時、レイは「信州こども山賊キャンプ」のボランティアに参加した。熊本地震の被災児童を招待したキャンプに「恩返しの意味を込めて」と。それを遠い東北から毎年続けてくれた。私の立教大学の授業「自然と人間の共生」でもゲストに来てくれ(オンラインだが)で、骨太な話もしてくれた(笑) 1年前に、沖縄に二人旅もした。レジャーではなく、沖縄のアイデンティティをめぐる旅だ。ハンセン病の隔離施設にも立ち寄り、国策のしわ寄せの現実を直視した。そんな経験が、レイの芯をさらに強くしていく。おとなしいけど挑戦を続けるレイ。自ら芯を強くしていくレイが、私は大好きだ。

立教の教え子がレイと会った。すぐに仲良くなり、SNSアドレスを交換している。微笑ましい。レイが交友を広げていくことが、うれしい。学生が、被災地の同年代の話を聴いて、そして友人になっていくことも、うれしいな。

私の役割はすでに、被災地の今のこどもを支えるステージから、あの時支えた被災青年を次の学びへといざなうステージに深化している。レイの学びと、学生の学びが、時を超えて連なっていく。その学びの連鎖を支えていくのだ。支援が産み出した支え合いの縁を、丁寧に紡いでいく。それを私は「支縁」と表現している。私は一生、レイと向き合う。それが「教育を通した支援」であり、「支縁」なのだから。

福島でレイに再会したことが、中日新聞に紹介された。以下、本文を転記しておく。

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中日新聞 2021年3月12日

被災のこども成長に感慨  山村留学に招待 交流今も  泰阜のNPO代表 辻さん

 泰阜村のNPO法人グリーンウッド自然体験教育センターは東日本大震災後の五年間、被災した小中学生を山村留学やキャンプに招待した。当時の子どもたちなどとの交流は今も続く。代表の辻英之さん(50)が十日から十二日までの日程で、福島県を訪ね、成長した姿を確かめている。

 「自然の恐ろしさに傷ついた子どもたちに、もう一度自然の素晴らしさを感じてほしい」。同法人は2011〜15年、福島県から計250人の子どもたちを「信州こども山賊キャンプ」に招待。福島などから3人の小中学生を2〜5年間の山村留学にも受け入れた。

 故郷に帰った参加者の中には、進学や就職してから、ボランティアとして戻ってくる人もいる。16年の熊本地震で被災した子供たちを招待した際も5人が手伝いに駆けつけてた。

 10日に辻さんが訪ねた福島市の大学3年生曽根レイさん(21)もその一人。原発事故の後、自由に外で遊ぶこともできなかった中、両親の勧めで山村留学に参加。小学6年から中学1年までの2年間を泰阜で過ごした。

 地元の同級生たちが体育の授業も満足に受けられない状況の中、自然に囲まれ、泥まみれになって思い切り遊べる日々。曽根さんは、電話での取材に「自分たちで考える共同生活の中で、多くの学びや成長があった。受け入れてくれた村には感謝しかない」と話す。

 今では泰阜村は第二の故郷。「村やグリーンウッドへの恩返し」と、福島市内の高校に進学してからは、毎年夏休みに訪れ、ボランティアとして山賊キャンプを支える。
 20年は新型コロナウィルス感染拡大の影響で、山賊キャンプは中止に。ボランティアにも来られなかった。「去年は何もできず歯がゆかったが、今後も学んだことを今の子どもたちにつなげていきたい」と熱を込める。

 辻さんは今回、約1年ぶりに曽根さんと再会。講師を務める立教大のゼミ生らも同行した。曽根さんは、ゼミ生らから受ける震災の体験などの質問に自分の言葉でしっかりと答えていた。「きゃしゃだったレイが頼もしく成長した」。古里の自然の驚異に向き合い、信州の山村で力強く育った若者の姿に、辻さんは感慨を深めた。

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 代表 辻だいち




2021年3月1日
 真正面から 〜今こそ、私たちの35年の学びをオープンにする時〜



みなさんに、折り入っての、心の底からの、そしてもう、恥も外聞もなく、真正面からのお願いがあります。
少々長くなりますが、最後まで読んでいただければうれしく想います。
そしてもし、差し支えなければシェア・拡散いただければ幸いです。

お願いとは「2021年度の講演・講義・研修会・シンポジウムなどに講師としてお呼びいただけないか、あるいは呼んでいただける人や団体・地域をご紹介いただけないか。私だけではなくNPOグリーンウッドスタッフもぜひ!」ということです。

※↓ 私の渾身の想いを記事にしています。こちらもぜひお読みください。
https://www.greenwood.or.jp/tane/7230/

※↓ 私たちの呼びかけが、朝日新聞(2月23日)にも掲載されました。
https://www.asahi.com/articles/ASP2Q7F9HP2MUOOB01B.html

すでにご存じの通り、このコロナ禍でNPOグリーンウッドの経営は壊滅状況です。
首都圏・中京圏・関西圏を市場とし、小さな地域(泰阜村:人口1600人)に根差す団体としては、都市部の青少年を地域に集めることへの地域住民の理解(ある意味恐怖と差別との闘い)、脆弱な地域医療への過度な負担回避という点から、感染症対策において極めて動きにくくなることは宿命でもあります。
若いスタッフの雇用を守り(=地域の持続性を守る)、コロナ収束後に必ずや良質な教育活動を提供できる戦力を確保しておくために、人件費の極限までの削減、公的支援金の活用、徹底的な支出抑制、緊急寄付のお願い、そして多額の借入金など、様々な経営対策を打ってきました。

しかし2020年度はおろか、この状況だと2021年度も立ち直れるのだろうかと、唇を噛み締める毎日です。

一方で、下を向いてばかりではありません。
泰阜村という地域、風土、暮らしの営み、そして村のこどもたちと真正面から向き合った1年という時間は、この村の価値や教育活動の提言などを様々なカタチ(例えばオンラインでの講演や大学授業など)で広めていくための極めて尊い営みだったと考えます。

※詳しくは以下サイト(私のブログです)をご笑覧ください。
https://www.greenwood.or.jp/tane/category/daichiblog/

そこで、なんとしてでも、2021年度もまた「高く飛ばなくてもいい、早く飛ばなくてもいい、落ちそうで落ちない“低空飛行”」を続けていくために、冒頭のお願いをさせていただく所存です。

2020年度は多方面から多くのご寄付、すなわち「こどもの未来への先行投資」をいただきました。
もちろん2021年度も引き続き未来への熱意を募る予定でいます(4月以降に、改めてまたお願いさせていただきます)。
一方で、世のため人のための仕事の対価として収入を得て(もちろんすべて法人の収入にします)、私たちが培ってきた実績や価値、経営・運営ノウハウなどを全国のひとたちに広げていくことも、同時に強く意識していく時が来ていると感じます。

2021年、NPOグリーンウッドの根幹事業である「暮らしの学校:だいだらぼっち」は35周年、またNPO法人化20周年を迎えます。
おこがましいようではありますが、時の試練に耐えたこの実践の価値を“魂の言葉”に載せて、講演活動や執筆活動などを通して世に問い、社会に丁寧に還元・提言していきたいと強く想います。

どうかこれらの想いをご理解いただき、2021年度の事業計画・事業予算において、私やグリーンウッドのスタッフが未来づくりに貢献できる機会をご検討いただけますようお願い申し上げます。

私は「ソーシャルビジネスやNPO経営・運営、本質的な学力観やリスクマネジメント、ひとづくり×地域創生」等、講演でも原稿執筆でもなんでもやります。

スタッフは「こどもの学びの場づくり・自然保育の場づくり・体験活動におけるリスクマネジメント・こどもと関わるスタッフ・ボランティアの育成・組織マネジメント・オンライン授業の作り方・安全講習・これらに関わる原稿執筆」等、ノウハウ提供・移転も含めて、多岐にわたるリクエストにお応えできると自負しています。
費用、内容、日程、オンライン・対面など細かい点はぜひご相談いただければと想います。

日本中のひとびとが、そしてあらゆる職業のひとびとが苦しんでいる時に、こちらのことばかりで本当に心苦しい限りですが、どうかご理解ください。

最後になりますが、一日も早い感染症の収束と、今般の東北地震で被災された方々の復興、そしてみなさんのご健勝とご多幸を信州の山奥より、心からお祈り申し上げます。
 代表 辻だいち




2021年2月15日
 命の尊厳に向き合う“ひと”を育てる 〜東北に再び発生した大地震に〜



もう一歩で死亡事故だった。

目の前で小6の男の子が、のどに氷を詰まらせる状況が起こる。チョーキング(のどつまり)だ。のどを抑え、青い顔をして、近寄ってたが、どうやら呼吸ができていない!

もし意識を失い心肺停止状況に進んでしまったとしたら?
この小さな山村(泰阜村)は、救急車を呼んでも15分以上かかる!
男の子の命をよみがえらせるのは無理!?

そんなことを頭で考えながら、男の子の背後にまわり、チョーキングの対処をすかさず遂行した。無事のどから氷が、文字通り「ぽーん」と出てきて、事なきを得る。しかし、目の前に家族や知り合いがいて、声も聞こえるし、顔も見えているのに、自分の声は出せず、呼吸もできず、死んでしまうのかもしれない恐怖を感じたのだろう。男の子は、しばらく恐怖におののいて泣き続けた。数年前のことである。


私は救急救命法の国際トレーナーの資格を、15年前に取得した。ご存じのように、私は国道も信号もない山村に住んでいる。こんな山奥に住んでいると、緊急事態の時に救急車が到達するのに多くの時間がかかる。村の小中学校まで一番近い消防署(しかも隣町)から15〜20分。さきほどの実例ではないが、心肺停止状態のこどもがいた場合、何も施さなければ確実にその命は失われる。私は長い間、へき地に住む人々こそ救命法を学び、そしてへき地にこそAEDを導入して、村に住む人が「あんじゃねぇ」(大丈夫、安心しろの意味の方言)と安心して暮らせるための土台創りに奔走してきた。


救命法のスキルだけを教えようとしているのではない。今日もまた全国でいじめや虐待で命の危機にさらされているこどもたち。世界中で紛争や飢餓に直面しているこどもたち。生きたいと強く願いながらも、コロナや病気で死んでいくこどもたち。市井に生きるひとびとの命の尊厳、ないがしろにされ続けるこの国の若者の尊厳。それらに無関心になってしまっているのではないかと疑いたくなるこの世の中。私は、救命法を通して、「一人一人が大事にされる」ことを伝えたい。つまり民主主義の土台を伝えたい。そして何よりも、一番大事な「命の尊厳」を伝えたいのだ。だから、一般受講生に講習することが可能な「インストラクター」を養成できるトレーナー資格に挑戦したのである。トレーナーとは、簡単に言えば「先生(インストラクター)の先生」である。

今回は、地元飯田女子短期大学の現職教員が、インストラクター養成講座を受講した。大学でリスクマネジメントや野外活動を学んでいたり、大学教員の前は小中教員だったりもして、指導経験も豊富。受講生の豊かな経歴と何よりもやる気に満ちた受講態度にも支えられ、長い時間をかけてゆっくりと養成した。

どれだけ確かなスキルや深い知識があっても、それを使おうとする「気持ち」がなければ意味がない。私が所属する「MFA(メディック・ファースト・エイド)」という機関は、受講生が講座を終えて帰る時に「救命法って難しい、やっぱり私には無理」ではなく、「救命法って難しい、でも私にもできるかも」と、ちょっぴりの自信を感じてくれるような救命法プログラムを開発した機関だ。つまり、学習しやすい講習であり、「やる気」を育てる講習なのだ。だから世界中で支持されいてる。

東北で再び大きな地震が発生した。改めて、ご近所の絆を確かめる機会でもある。阪神大震災でも、被災した市民同士が迅速に応急処置を施すことができていたら、多くの命が助かったという。山間地でも都市部でも、平時でも災害時でも、命の尊厳に変わりはない。今回、私が認定したインストラクターは、こんな世の中で「私にもできるかも」と命の尊厳に向き合う市民を育ててほしい。小さな山村から力いっぱい応援したい。
 代表 辻だいち




2021年2月1日
自然が教えてくれるもの 〜闘う相手はコロナだけではない〜



自然が教えてくれるものはかけがえがない。

厳寒のこの時期、泰阜村では信じがたいほどの星空になる。まるで宇宙のど真ん中にいるみたいだ。キーンと冷え切った早朝に、大渓谷を埋め尽くす雲海・川霧。深呼吸すれば、五臓六腑に清冽な空気がしみわたる。

大河:天竜川にそそぐ支流は、これまたとんでもなく澄んだ水が流れている。この清水は、そのままわが村の水道水になる。はっきり言って、店で売っているどんな水よりオイシイと想う。

山菜、野菜、燃料の薪、そして獣肉などなど。山の恵みがこれでもかというほど、私たちの身体に流れていく。

最近は、猛烈な台風や豪雨も多い。それでも信州は、アルプスなどが屏風となって立ちはだかり、台風の侵入を防ぐ。自然の猛威から守ってくれるのもまた“自然”なのだ。災害の恐怖と隣り合わせの豪雨も、やはり豊かな山の恵みにつながっていく。自然のチカラが、私たちの営みや歴史を創っていく。

コロナウィルスもまた自然。この自然の猛威に対峙できるものは、やはり自然のチカラなのではないか。自然と向き合う暮らしを丁寧に営むことが、コロナに対峙するためには必要なことだとつくづく思う。それはけっして、田舎暮らしをする、ということだけではなく。

再び緊急事態宣言が出た。この1年、私たちはいったい何と対峙したのだろう。コロナウィルスと対峙した。それは間違いない。でも、それと同じくらい、周囲の目や、自己中心的な態度や、無責任な政府の言動や、心無い(が、実は自分も抱いてしまいそうな)誹謗中傷などと、常に向き合ってきたのではないか。それは、身体も心も壊れてしまいそうなほどに。そして、人間関係や信頼、そして倫理観も壊れてしまいそうなほどに。

敵か味方を峻別し、敵を過剰に攻撃する風潮。前の首相をはじめ、国会議員にも、そして社会にも蔓延した。アメリカに目を転じれば、信じがたい言動を繰り返す前大統領。私と違うこと、あなたと違うことが、こんなにも暮らしにくいと感じる世の中になってしまうとは。

反対意見を聞き入れず、折り合いをつけようとしない風潮。誤りを認めず、隠す・誤魔化す・ねじまげて、それで何が悪い?と開き直る風潮。今の首相をはじめ、閣僚にも官僚にも、そして悲しいかな国民にも蔓延しつつある。丁寧に対話することや正直であり続けることが、こんなにも生きづらいと感じる世の中になってしまうとは。

コロナ禍であらわになったのは「分断」だ。こんなにも“希望のない世の中”を生きなければならないこどもと若者たち。いったいどう育ってしまうのだろうか。闘う相手はコロナだけではない。

ちょっとみんな、外に出よう。大空に向かって深呼吸しよう。夜空を見上げて、思いきり感動しよう。炎にあたって、暖かさを感じよう。うまい水を、うまそうに飲もう。当たり前にそこにある自然に、もう一度丁寧に向き合ってみよう。

自然のチカラが、自分を覆いつくそうとする闇を追い払ってくれると信じたい。自然に対する謙虚な態度が、今こそ、求められているのかもしれない。ハラをくくって、自然と向き合おうではないか。
 代表 辻だいち




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