岐阜聖徳学園大学合宿 「学ぶはどこでもできる」を感じる3日間

今年は2年ぶりに岐阜聖徳学園大学の2泊3日の合宿が行われました。参加するのは8名。ほとんどが将来教員を目指す学生たち。私たちが行っている、燃料や食料、暮らし方など、主体者となって「生み出す」暮らしを体験する中で「学ぶとは何か?」を仲間と一緒に「対話」で考える3日間です。

今回のプログラムは元学校林で間伐された木を運び出し、こどもたちの遊び場を確保すること!とてもシンプルです。森全体では何十トン、何百トンという間伐材が横たわっています。それらをそのまま放置しても自然に還るには何十年もかかること、燃料や材となるのに放置されるのはもったいないこと、そして何よりこどもたちの遊び場が狭くなってしまいます。すべての木材を搬出することはできませんが、特にこどもの動線となるフィールドの整備を、学生たちの知恵と力を使って解決してもらいます。

今回の講師はだいだらぼっちの創設メンバーで、陶芸家、林業士でもあるギックです。

まずは「考えるよりも動いてみる」ことを大切に、来て早々、100kg以上ある丸太をみんなで持ち上げてみました。さすがにその重さに驚いています。また足場も悪く、この方法で運び出すのはなかなか時間もかかりそうです。

ギックに様々な方法を教えてもらう中で最も画期的な方法がこれ!後ろの切り株を支点にしてロープをひっかけ、丸太自身を滑車にするという「動滑車」方式です。少ない人数でも200kgを超える丸太を楽々と引き上げることができました。理科を専攻している学生がいたので「これが動滑車!実際に使われるの初めて見た!」と感動していました。

初日は1時間ほど丸太の運び出しをやって、明日の本番につなげます。「こんなに重いものを持ったことがない!」という学生たちは2日目の本番に向けて少し不安な顔も。さて明日はどうなるのでしょうか?

2日目スタート。どこから手を付ければいいのやら…という様子もありましたが、動きながら考えることで動きがどんどん変わってきます。

5mを超える丸太も全員で力を合わせて引っ張り出します。写真の先の道は左へ大きくカーブしています。道に沿って引っ張るとこの長さの丸太は進みません。そこで丸太についている二人が方向を修正しながら進めるのですが、ここで学生たちが発見したのは「ベクトル」。行きたい方向に引っ張るためには、方向修正係がどちらに引っ張るかが重要です。「これベクトルだ!」とここでも学生たちは発見します。「こんなところで数学が学べるなんて」です。

細い丸太であれば女性2人でも軽々運べるように。作業の面白いところは、最初であれば持てないような重さのものも、進むにつれてなぜか持てるようになります。「こんなもの持てるわけがない」という自分の固定化された価値観が、だんだんと「もしかしたら持てるかも」に変わってくるのです。自分の可能性の発見も感動につながります。

こちらはラダーレールを使って材の引き上げ。ここまでくるとロープの扱いも堂に入ってきます。見てください!女性だけでもこのサイズの丸太をどんどんトラックに載せていきます。

2日間朝から夕方までほとんど休みなく働きました。昨日来たときは表情も固く、仲間と話し合うこともおぼつかない様子でしたが、体がほぐれてくると心もほぐれてくるようでした。

3日目は、この3日間で学んだことを言葉にするワークショップ。
「この3日間で学んだことは?」そして「学ぶってなんだ?」という2つの問いに仲間と向き合います。

今回のテーマは山作業です。だからといって山での「作業方法」や「植生」「間伐」を学ぶわけではありません。その「過程」にあるひとつひとつが全て学びにつながります。特にグリーンウッドが行う大学受け入れ合宿は、食事作りやお風呂焚きといった「暮らし」を学生たちが主体的に創りあげることを重要視しています。

暮らしで仲間ができると「安心感」が生まれます。それは「受け止めてもらえる」「失敗してもいい」という空気を生み出し、積極的な「行動」と「発言」につながります。動きが加速すると、仲間の言葉や行動を「プラスに受け止める」「耳を傾ける」と学生たちの姿勢が変わります。

学生たちは、「これまでグループワークや授業で自分の意見を言うことはなかったけれど、みんなのおかげで言いたいことを言い合えた」と口にしていました。「学びの感度=アンテナ」が上がり、学びが加速していく様は見ていて感動を覚えるほどです。

この2日間で最も学生たちが口にしていたのは「協力の本当の意味がわかった」ということ。「こんな重さの丸太は無理!」と思っても、誰か一人が加わるだけで運べたりすることに、体感で「協力」の意味を学んだようです。それ以外にも先ほど出てきた「動滑車」や「ベクトル」、風呂焚きでは「燃焼の3要素」などなど。
「言葉や知識は知っている。でもそれがどういうことなのか実は知らない」ということを知ったことはとても大きいことです。

特に学校の先生は「協力が大事」とよく言います。その言葉自体になんの異議も異論もありません。しかし、本当の意味で「協力」を知る機会は、今の時代にあまりにも少ないのです。なにより一番の問題は、「本当は知らない、ということを理解していない」ことです。
今回の参加者の中には4月から現場に出て教員になる学生もいました。そんな彼らが「協力の意味が分かった!」と話してくれただけで、この3日間の合宿を、本当にやってよかったと心の底から感じます。きっと彼らは「本物の学び」を教室の中でも体現してくれるはずと信じています。