足の裏から聞こえる“きらめく音” ~毎朝の田んぼ作業は質の高いトレーニングなのだ~

田んぼ。
この時期は、毎朝、草取り。
今年の猛暑は、信州といえども朝晩もけっこう暑い。
でも、日中にやるよりはマシということで、朝にやる。
南信州の風習「朝づくり(朝飯前の一仕事)」の意味が、身体でわかる。
ここ2週間ほどは、スタッフ以外の若者も一緒に草取り。

もうすっかり大人になった山村留学や山賊キャンプの卒業生。
信州こども山賊キャンプのボランティアで入れ替わり立ち代わりにやってくる。
なのに、田んぼの草取りまでやってくれるのだから本当に感謝だ。
今回は、稲に良く似たヒエやどうしてこんなに育つの?というオモダカを抜く作業。
彼らはきっと、はたから見てると草取りが簡単そうに見えたのだろう。
ところがこれが、きついのなんのって。
「前を向くな、下を向け!」
前を向くと果てしなく遠いゴールに心が折れそうになる。
だから下を向くのだ。

▼ひたすら下を向く

様々な大学の実習や留学生も訪れる。
東京の大妻女子大学の大学院生たちの実習。
泰阜村に夕方に着いて、翌日の早朝にいきなり田んぼに連れていかされて草取り。
それでも文句ひとつ言わないのだからたいしたものだ。
彼らが合流して7人での草取りは「ひとってすごい」と皆が口にするのに十分だった。。

鹿児島大学に中国から留学中のカカ(ニックネーム)。
同じく中国から立教大学に留学中のサン(同上)。
2人とも長期の滞在期間中、毎朝田んぼで「はったんどり(田車ともいう水田除草道具)」の作業。
稲の列の間を行ったり来たり。
泥の中の規則正しい作業は体幹トレーニングともいうべきもの。
どうせ鍛えるなら、電気や化石燃料を使って鍛えるよりも、自然の中で冬に食べるために鍛えたい。
質の高い筋肉痛が彼女たちを襲ったに違いない。

▼自然が彼女たちの笑顔をつくる

この田んぼは、信州子ども山賊キャンプのキャンプ場の目の前にある。
草取りがしんどくて顔を上げるといつも、こどもたちの歓声が聞こえる。
蝉が鳴き、風渡る稲がそよぎ、川のせせらぎがきらめく。
この集落に30数年間にわたって奏でられてきた、原色のようにきらめく音だ。
この音が、耳からではなく、田んぼを踏みしめる足の裏から聞こえてくるようだ。
この土地の歴史を足の裏から学ぶ。
彼らや彼女たちにとって必要な、土からの学び。
五感の学びが心地よい。

代表 辻だいち