宮城県鳴子温泉で講演 ~観光に力を注いだ地域、地元のこどもの教育は??~

宮城県は鳴子温泉に来た。
昔はこけしで有名だったが、皆さんおわかりだろうか。
最近は“鳴子峡”という紅葉の名所として有名である。
実は、学生時代に立ち寄ったことがある。
当時札幌の大学で体育会(運動部)に属していた。
仙台での大会後、バイクで立ち寄った。
駅前の共同浴場に入り、土産物屋でこけしを見て、高値にビビった覚えがある(笑)
その後、鬼首の間欠泉を見て、秋田大曲、田沢湖、八幡平、八戸、そしてフェリーで北海道へ戻った。
大学3年、もう28年前の6月のことである。
それ以来の鳴子だ。

▼鳴子温泉郷のひとつ「かわたびおんせん」に降り立つ

豊富な温泉に、こけしを代表とする伝統工芸、紅葉の名所に間欠泉などなど。
観光資源豊富な鳴子温泉。
そんな町に住む人々から講演に呼ばれた。
観光振興一本で突っ走ってきたこの町も、気付けば観光客は減ってきているという。
さらに深刻なことは、観光振興の陰で、地域のこどもたちへの教育がないがしろにされているのではないかという危機感を抱いているとのこと。
もっと深刻なことは、その危機感を抱く人々が少ないのではないかということだ。
そんな危機感から、地域の豊かさや価値、教育の重要性に気が付いていない鳴子の人へ向けて話をしてほしいと、私が呼ばれたというわけである。

着いてすぐ、鳴子町のフィールドに案内いただいた。
七色の泉質を持つ温泉、川の河川敷を遊び場に使う保育園、世界有数の強酸性沼、東北大学付属農場…
その中でも驚いたのは、東北大学農学部付属のフィールドセンター。
130年の歴史を持つ広大な農場は、大学付属農場としては全国一の規模を持っている。
そこに存在するのが当たり前すぎでその価値に気づかないのは、どこの地域でも同じだ。
でも、130年もそこにあると、ただの風景となってしまうのだろう。
この鳴子の地が、最高学府の研究者の学び、しかも自然・環境に関する学びを、130年も支えてきた。
この教育力をどう捉えるか、だろう。

▼世界有数の強酸性沼「潟沼」

▼広大な東北大学フィールドセンター

▼農場で収穫された乳製品や果実をいただく。信じがたいほどおいしい。

そして夜は懇親会。
私を呼んでいただいた鳴子の皆さんや鳴子を愛するひとびとと。
今回は公的な補助金や民間の助成金などに頼らず、完全に市民のチカラで講演(費用も含めて)計画されたとのこと。
問題意識を持っているのが年配者ばかりかと思いきや、老若男女がグループ(環境教育研究会)をつくっている。
これは、可能性があるじゃないか。
本気で「教育を中心に据えた地域づくり」を目指すと言う地域の皆さんと、飲んで語り明かす。

▼小さな地域同士の夢を語り合う

▼三陸の幸が並ぶ。

翌日の市民発!鳴子環境教育フォーラムで登壇。
そしてこんなテーマで講演した。
「ひとづくり×地域づくり=素敵な未来!」
私はここ10年くらい、全国の中山間地や離島に講演などに呼ばれ、その地域の現状を見続けてきた。
外部のひとびとや青少年をどうその地域に呼び寄せるかという仕組みは大成功を収めている地域も多い。
しかし、その地に生まれ育つ地元のこどもへの教育などはとても脆弱に映った。
その地に生きるこどもたちにこそ、質の高い学びや育ちを促さないと、結局は地域の資源は外部から消費的に使われるだけに終わる。
最近では、その意がしっかり伝わる地域が増えてきた。

鳴子の皆さんもまた、それらに気づいて動かれていることには、大きな経緯を表したい。なかなか成果が見えないものに、投資をするのは勇気がいるものだ。
でも、今それをしないと“その日は永遠に訪れない”とも感じている。

渾身のチカラで語ったこんな内容は、大好評だった。
小さな地域は、大きなことはできない。
しかし小さな地域だからこそできることがある。
それを丁寧に紡ぎ直し、全国の小さな地域どうしてチカラを合わせて解決しようじゃないか。
そんなことを最後に提案した。

こけしの地らしい名札などをいただいた。
創意工夫の想いが、この地に眠っているんだと想う。
丁寧にものごとを動かす細やかな想いもまた眠っているのだろう。
何せ130年も最高学府の学びを支え続けた地域なのだから。
それを引き出せば、大きな可能性になるかもしれない。
鳴子と泰阜、交流したらもっともっと学びがありそうだ。
いつものことながら、多地域間交換留学構想も、提案した。
鳴子の皆さんから賛同の声があがったのは言うまでもない。

▼手作りのこけし名札(”だいち”は私のニックネーム)。むちゃかわいい。

私を呼んでいただいた市民有志の中に、オドロキの縁があった。
お互いが「え!、ホントに?」という不思議な縁だ。
パネラーや聴衆に東日本大震災支援の時に知り合った人もたくさんいた。
縁が縁を呼ぶ味わい深い時間。
質の高い求心力が高まっていく。
だから夢を語るのは楽しい。
やろう。
動こう。
夢を実現しよう。

代表 辻だいち